仕上げ工事は急ピッチで進む。この建築を見た人の口からは、ピラミッドの様だとか、スフィンクスの様だとか、いや、ロケットじゃないかとか、果ては巨大な昆虫が移動している姿みたいだとか、いろいろな感想が出てきたが、私の中で最初に形体のヒントになったものは、西欧を旅した時に、イタリアやスペインやフランスの田舎で見た中世のロマネスク教会であった。内部空間の形がそのまま外部に現れ、素材を生かした、素朴なロマネスク教会の内部に立った時の、あの包まれた様な空間体験は私の身体にいまだに強烈に残っている。
さらには、外部に「中庭」を作る事のできない自然環境のなかに「内部化された中庭」を作ろうと試みた。中庭を取り囲む建築の味わいをどうにか北海道で作りたかったのである。内部化された中庭は、この建物に集う人々の憩いの場所にふさわしい。ある方が、いにしえのキャラバン・サライ(らくだで旅するキャラバンの休息・宿泊の為の施設)の様だと言って下さったが、私の思いが伝わった気がしてとても嬉しかった。
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