やがて、木の柱や梁が立ち上がり国道からも特徴的な建築の姿が認められるようになる。建主、設計者、工事関係者が会して厳しい冬の原野でおごそかに上棟式が執り行われた。屋根が葺かれ、外壁に落葉松の羽目板が貼られ、木製の窓が入れられて、仕事は内部に移っていく。
弟子屈にも遅い春が来た。工事は予定よりかなり遅れていたが、建物はようやくその輪郭を原野にあらわして来た。設備工事、電気工事、断熱工事などが進み、内装工事に入る頃には、ほぼ、内部外部とも形を整え、建物内部の形や空間のつながりが体験できるようになる。
設計者はこの頃が一番楽しい。事務所で図面を引きながら、模型を作りながらイメージしていた外観や内部空間が、そのままの形で立ち上がっていく。大工や職人と打ち合わせをしながら現場内を見て歩く。魅力的な夏の季節に、毎年子供を連れて泊まりに来る姿を想像して一人ほほ笑む。「これは、お父さんが作ったんだよ。」と言ったら子供はどんな反応をするだろうか、楽しみである。
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