建主と建設会社との間で工事契約が結ばれた。いよいよ着工である。
今回の契約書には、事務所の指定する契約約款を添付してもらった。万一のトラブル時に役立つ事もあろうかと添付したのだが、これはやっておいて良かった。現場打ち合わせと言うのは普通は数時間で済むものなのだが、今回は2日がかりだった。1日目に一人で現場を歩き回り、手抜き部分や間違いを一つ一つチェックし、次の日の建設会社との打ち合わせに臨んだ。
設計事務所は、建主と建設会社の間にあって客観的な立場で物事を判断する。だから、もしも万一、建主が無理な注文をした場合には、中立的な立場で説明して、建設会社に損害を被らさぬようにできるし、逆に建設会社が手抜き工事や楽な仕様への変更をしようとした場合は、建主に代わって指導し、設計図書通りに工事させる事が出来る立場なのだ。もしも、今回の現場を監理する事なく設計図だけをこの建設会社に渡していたらどうなっていたろう。ちょっと空恐ろしい気がする。素人の建主では、好き勝手にやられていたに違いない。「設計事務所は設計と監理をします」と、仕事の話がある度に最初に言ってきたが、今回ほど、設計事務所の監理の重大さを認識させられた現場はなかった。 |