設計主旨
起伏に富む丘陵に広がる住宅地に建てられた 、夫婦と幼児2人のための住宅である。夫婦とも大きなサイズの油絵を描き毎年展覧会に出展しており、絵画制作のためのアトリエが併設された。
(1)家族の場
家族が集う場を、階段周りの大きな吹抜けを介して、1〜2階に作った。
絵画制作のためのアトリエと1階居間(居間A)の間に三尺幅の土間の帯をとり、両側に半透明の引戸を設置して、家族の場と作業場を適度に分離し、また引戸を開けることによって一体となる工夫をした。
この土間は、将来絵画教室を開く際には近所の子供達が家の内を通らずに土足で出入りできる通路となる。
2階は吹き抜けを取り囲む様に家族のための場(居間B)を作り、アトリエ屋上の広いデッキとつながる配置とした。これにより、2階デッキから1階キッチンまでが一つながりの空間となり、家族の活動の中心的な場となる。
2階和室は、昼間は引込戸を開け放って2階居間と一体の空間として利用し、夜は夫婦の寝室となる。子供室も引き戸を介して2階居間に開かれる。
この様に、家族一人一人のプライバシーを最小限確保しながら、個々の生活が家族の活動なかに自然にとけ込んでいくための工夫がされている。
(2)光の採り入れ
建築本体を東西に長い長方形として北側に寄せ、南側に1層のアトリエを配置する事により、敷地南側の住宅が建てかわった場合でも、南からの太陽光の採り入れを阻害されない形体とした。
勾配天井の一番高い部分である、2階居間・和室上部の南側に面した部分に横長のハイサイドライトを設置した。ここから取り込まれた太陽光は、天井面で反射したり、直接吹抜けを介したりして、1階居間にも達する。
2階デッキ出入口や1階土間出入口の背の高い大開口上部にはスチール製の庇を設置し、雨よけの効果に加え、季節により光を調整して採り入れる効果を期待している。
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