家族の場/子供の場
荒木毅/荒木毅建築事務所
Episode/
うちのかみさんは看護師なんですが、仕事が遅くなった日も夜勤の次の日も、頑張って家庭と向き合っています。子供達と接する時間の長さも深さも父親の比ではありません。現在、うちの家族が上手く行っているのは、ほとんどかみさんのお陰なのですが(当然ですよね)、今回の展示のテーマが父と子なので、自分の事を通してのコメントです。
共稼ぎのわが家では、息子達を保育園に送り届けるは私の役目でした。普段、帰宅の遅い生活をしていますから、通園の時間は父親と子供たちとが話しのできる貴重な時間でした。赤ん坊の時はだっこをし、歩けるようになったら手を引いて、親子が同じ景色を見ながら通いました。
ですがそんな期間はやがて終わりました。子供たちが成長するにつれて、彼らは独力で活動を始め、友人と過ごす時間が増え、どうしてもだんだんと親子の接する時間は減ってきます。
子供が成長し家族の関係が変化しても、家族が集まってくつろげる空間を、私たちが工夫して作ろうとしている意味はそこらにあります。一家族ごとに異なる条件を勘案しつつ、家族で暮らす貴重な時間を大切にした家を作り続けて行ければ、仲の良い家族の数が少し多くなるんじゃないかと思っています。
Policy/
自然光の差し込む、力強くも簡素な骨組みによって作られた建築。設計者の経験と技術的蓄積に裏打ちされた家。そこでは、家族それぞれの、思い思いの或いは一体となった活動が繰り広げられます。
やがて時が流れ、建物は古び、そこに置かれた雑多なものたちはその場に馴染み、そこで楽しく暮らすご家族の想いが柱や梁に染み込みます。
誰かがそこを訪ねたら、ふっと温かい気持ちになるような、そんな住宅を作り続けて行きたいと考えています。
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