CHの概要
〜CHと名付けて、作ってきたコートハウスの特徴〜
コートハウスは古くから作られてきた建築形式のひとつです。私は、日本の都市環境に適合する様工夫した、新しい形式のコートハウスを「CH」と名付けて作ってきました。ここでは、CHの特徴を解説します。
生活を守る空間構成
(1)骨組みとしてのかたち
タテ・ヨコ・ナナメ
(2)太陽光を取り入れるかたち
南北2棟配置、開口部
(3)内外部をつなげるかたち
コート、ゾーニング、プライバシー、風の抜け方
(1)骨組みとしてのかたち
●構成要素としてのナナメ
CHは、木造軸組工法(在来工法)で作っています。この工法は、垂直(タテ)の柱と水平(ヨコ)の梁により空間が構成されています。伝統的な日本の木造の家屋の美しさの要素の一つは、このタテ・ヨコの構成にあると思うのですが、CHでは、これに加えて、太陽光の導入のために取り入れられた急勾配の大屋根と、上下移動のための階段のナナメを空間の構成要素の一つに加え、タテ・ヨコ・ナナメの要素で空間を形作りました。
私は、住空間は、装飾的な繊細なディテールで満たされる必要は無いと考えています。住空間は生活を入れる大枠なのだと思います。例えば、絵で言えば額縁またはキャンバスの様なもので、それ自体は控えめですが、生活と言う絵を書き込む事により華やぐ場になるのです。このように生活を邪魔する事無く、また生活により壊されもしない力強い表現が住宅建築には重要だと思います。CHにおいても、恣意的(装飾的)でない構成要素により、力強い居住空間を作ることが出来たと考えています。
(2)太陽光を取り入れるかたち
●南北2棟配置(南北軸に沿った配置)
コートハウスにおいて、建物を南と北に配置するのは、一般的にはあまり上手い解決策とは言えないと思います。南棟により、中庭や北棟に日差しが入りにくくなるからです。CHのナナメは、これを解決するために南棟に急勾配の大屋根のナナメを取り入れました。これにより、冬でも中庭や北棟の1階に日差しが差し込みます。
都市の過密な住宅地においては、敷地の南側にも2階・3階建ての家が建っており、折角南側に庭を作っても、これらの建物が日の射し込むのを妨げます。この様な敷地において、南棟を敷地ギリギリに寄せて、自分で自然光に満ちた外部空間を確保するCHの方法は有効です。
●開口部の取り方
南棟は、大屋根の掛かった吹き抜けのある背の高い空間ですが、ここには南側上部より太陽光が降り注ぎ、北側コートに大きく開いています。これにより、生活の中心である光り溢れるコートと視覚的にも身体的にもつながりながら、南からの日射も得ることができます。南側窓を上部のみにしたのは、南側隣家との視線の交錯を防ぐためです。
北棟は、南側にあるコートに対して大きく開き、コートを介して南側居間とつながり、また1階の居室も太陽光が十分に入ります。
(3)内外部をつなげるかたち
●外部の居間としてのコート(ゾーニングの要としてのコート)
・パブリックな活動の要の存在
CHでは、1階が居間となっていますが、家の中心にあるコート(中庭)を介して、身体的にも視覚的にも南北の居間がつながります。コートは、生活の要の位置にあります。
・個人的(家族的)な外部空間
各部屋は、周囲の家々との間の視線の交錯を避けるよう、外周部では壁面が多いですが、外部空間であるコートには大きく開かれています。コートを通して家族の動きを知ることが出来ます。
●上下のゾーニング
・パブリックゾーンとしての1階とプライベートゾーンとしての2階
コート(中庭)と水平につながる1階を、パブリックゾーンとして、居間・食堂・台所などを持ってきました。2階は、プライベートゾーンとして各個室を配置しました。
・東西平屋上部はデッキとしての半パブリックスペース(緩衝ゾーン、サービスヤード)
平屋建て部分上部は木製デッキとし、1階のコートともつながる半パブリックゾーンとしました。サービスバルコニーなどとして使用されます。
●プライバシーの守り方(外部とのつながり方)
コートに対しては大きく開き、外の家々に対しては壁面を多くして接する事により、コートを介して外部とつながりながらも、直接的な視線の交錯を防いでいます。
1階をパブリックなゾーンとし、2階個室とはコートを介してつながるので、開かれ過ぎず守られ過ぎず、プライバシーは適度に守られます。
●風の通り抜け
・スリット窓との組合せで風が抜ける
各個室には、コートに開いた大きな窓とは別に、外周部に細いスリット窓を設け、風の通り抜けを計っています。
(8)風景の制御装置としての2棟配置
コートハウスは、コート(中庭)に面して大きな開口部を取り、そこから光や風を取り入れながら、周囲の家々に対しては壁面を多くしてプライバシーを確保する事ができます。
CHの2棟配置は、これに加え北棟2階より外の景色を見る際に、南棟大屋根が屏風の様に立ち、周囲の家々の窓との視線の交錯を緩和してくれます。
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