旭川での住宅の設計の仕事の話があった時、だから、最初に考えたのは、どうにかして、東京での貪欲なデザイン感覚で北海道に建築を作れないだろうかと言う事だった。
本来、北海道には、内地と違った「独自の住宅の形」があるだろうとは予測がつく。内地の伝統的な木造住宅は、風土気候に適合し、姿・形も洗練されているが、これを北海道に建てても住む事は出来ない。雪や寒さに耐えられる建築とするには伝統的に培われてきた工法や仕様では歯が立たないからだ(ここで伝統的な住宅とは、瓦や土壁・畳や杉板によって伝統的な手法で作られて住宅の事を指す。)
近年の北海道での動きとして目を引くのは、厳しい自然環境(特に冬)を克服するための知識や技術に裏打ちされた高性能の住宅がそこかしこに出現しつつある事である。これは、断熱、気密化、最小限換気などの知識が広まった事によるが、そう言った住宅を見ても、形や空間のデザイン、材料本来の使われ方、吟味のされ方などについては、本州での伝統的な住宅のレベルに達しているものは少ない。
北海道の人間でありながら東京のデザインと自然環境に浸っている者から見ると、北海道の住宅は、そろそろ技術水準を売りものにする事を卒業し、独自の形の住宅を作る事に目が向いても良いだろうと思われる。 |