矢来の家/減築[renovation] (previous page)住宅

改造後の外観

都心に建つ古い家を、過去の記憶を残しながら「減築」した、庭のある夫婦二人のための住宅です。


東京都新宿区の古くからの住宅地。親の代からの持ち家である築50年程の住宅にくっついて築40年程のアパートが増築された木造2階建ての建築に、若いご夫婦が住んでいました。「古い住宅と増築されたアパートをリフォームして、家族二人と猫二匹が住みやすい家にしたい。」とのご希望をかなえるため、現地を拝見し案を練りました。

 

考えた末、DKとして使われていた味はあるが大分痛んできてもいた古い部分を思い切って「減築」し、そこに緑を沢山植えて庭とし、築40年程の主にアパートだった部分をリフォームすることにしました。

 

1階を土間、2階を板間として、階段と吹抜けでつなぎ家全体を一体の空間としました。構造上のバランスを考えて一部の窓を塞ぎ壁にしましたが、残した窓を取り換える事はせず、古い健全な柱や梁は極力残し表に見せました。

 

古い柱に沢山残る「貫穴」を埋めて白く塗り、もともとの建物の壁や開口部の位置の「記憶」を保ちました。書籍を沢山持たれているご夫婦のために、壁にはぐるりと固定の厚い棚板を開口部の位置とは無頓着に回しました。

 

古い部分を作った昔の職人達に敬意を持ち、彼等との共作のようにして作り上げた住宅の内部空間には過去の温もりが伝えられることとなりました。

矢来の家 改造後の外観

改造前の外観

写真下の手前に写っている平屋部分を「減築」し、緑を植えて庭としました。
改造後の外壁には、うっすらと平屋の屋根の跡が残っています。

矢来の家 改造前の外観

工事の様子  外部

それでは、工事の様子を少しお見せしましょう。

まず、平屋部分を解体し取り去りました。

矢来の家 工事の様子  外部

工事の様子  内部

 

矢来の家 工事の様子  内部

工事の様子  内部

内部の壁や天井を剥がして行きます。

矢来の家 工事の様子  内部

工事の様子  内部

築40年以上経った建築の骨組みでしたが、思っていた以上に健全で、
栂材のしっかりした柱や梁が現れました。

矢来の家 工事の様子  内部

工事の様子  内部

壁には筋違もところどころにありましたが、日本の伝統工法である「貫」も入っていました。この時期(過渡期)の住宅の作られ方なのでしょう。

矢来の家 工事の様子  内部

工事の様子  補強


空間構成上不要な窓を塞ぐ際には、必要に応じて壁の構造的バランスを良くするために、間柱を入れ構造用合板で塞ぎました。

矢来の家 工事の様子  補強

工事の様子  補強

床も一部歪んでいた根太を入れ替え、構造用合板を貼って固めました。

矢来の家 工事の様子  補強

工事の様子  補強

 

 

工事の様子  下地

天井や壁の下地を作り、断熱材を入れて行きます。

矢来の家 工事の様子  下地

工事の様子  下地

 

矢来の家 工事の様子  下地

工事の様子  下地

 

矢来の家 工事の様子  下地

工事の様子  内装


石膏ボードを貼り、木製棚を組み込み、
ボードにパテを扱いて塗装の下地を作りました。

矢来の家 工事の様子  内装

工事の様子  内装

 

工事の様子  内装

工事の様子  内装

 

矢来の家 工事の様子  内装

工事の様子  内装

・・・ほぼ、室内の形が見えてきました。

矢来の家 工事の様子  内装

外観(after)


道路側から見たところです。
平屋を減築して庭とし、芝生と樹木の庭にしました。手前に見えているのは柳。

矢来の家 外観(after)

外観(before)


以前は、道路際まで築50年以上の平屋があり、敷地一杯に建物が建っていました。
家族構成も変わり、建物も古くなったので、平屋部分を減築することにしました。

矢来の家 外観(before)


2階の出窓から、庭を見下ろしています。
写真右の木製の格子戸から入ります。土間に埋込まれた鉄平石はもともとこの場所にあったもので、以前はここが玄関ポーチでした。
芝生の庭とし、そこでいろいろな活動ができるようにしました(芝生の上で寝そべったり、お茶をしたり)。また、道路との間には柳を中心に西洋シャクナゲ、ヤマボウシなど様々な樹木を植えました。一部菜園にもなっています。
道路との間の塀は圧迫感の無いように高さを揃え、モルタルの粗い仕上としました。

矢来の家 庭

土間と庭


庭に開かれた引戸から、1階土間に入ります。
内側に明障子も付けられ、プライバシーを守ります。

矢来の家 土間と庭

土間


この場所は、もともと居間として使われていましたが、正面の障子はそのまま残しました。
一部真壁として柱を見せました

矢来の家 土間

土間より奥の和室方向を見る。


もともと、細かな部屋に仕切られていた1階ですが、壁を抜いて一番奥の和室まで、土間を広げました(土間には床暖房を設置しました)。
階段手前は元の居間、階段より向こうはアパートとして使われていた部分です。

矢来の家 土間より奥の和室方向を見る。

2階板間。


2階は、杉板の板間とされました。
杉板は傷つきやすい欠点はあるものの、柔らかいのでその上に座ったり寝ころんだりする際は他の木より大分楽です。歩く際も足に優しく、断熱性能があるので少し温かい木なのです。

 

柱は、もともとの位置に残すことをこころがけ、平面計画を練りました。残された柱は新たに塗装をせず、日に焼けた古びたままの風情としました。壁だった部分には「貫」の穴が沢山ありましたので、モルタルで埋め白く塗って、もとの壁の「記憶」を残しました(この家にお住まいのご家族にとっては、古い家も思い入れのあるものでしたので、このようにしました)。
屋根の梁も、綺麗なものは見せることとし、天井を一部上げました。

矢来の家 2階板間。

キッチン


キッチンもシンプルな家具として作られました。
お料理好きのご主人のために、2階板間の中央にキッチンが作られ、その回りを回遊できるプランとしました。

矢来の家 キッチン

お住いの様子


中央に階段、その左がキッチンカウンターです。右側は書斎コーナーとなっていますが、木の引戸で閉じることもできます。
建物外周部にウィスキー樽の箍のようにぐるりと回された木製の固定棚は、書籍を沢山お持ちのご家族のための本棚としてだけでなく、小物の飾り棚、テレビやワインボトルの置場などとして使われています(一番上の棚に何も置かれていないのは、ここが猫たちのキャッツウォークとして使われているからです)。
その先が洗面所などの水回りとなっています。

矢来の家 お住いの様子

ダイニング


2階は一体の空間となっていますが、キッチンより手前は主にLDKとして、奥の引戸の向こうは書斎として使われます。

矢来の家 ダイニング

書斎コーナー


固定棚のひとつを奥行きを大きくして机としました。左側の出窓から、下の庭が眺められます

矢来の家 書斎コーナー

生活の様子


ダイニング正面の棚は、テレビやCDなどが並べられています。

矢来の家 生活の様子

土間・庭のつながり


土間に置かれたソファーで寛がれていた奥さんが向った先は、
庭の菜園で作業中のご主人のところでした。

矢来の家 土間・庭のつながり

土間・庭のつながり

 

矢来の家 土間・庭のつながり

1階廊下


突き当りはトイレ。近くの本棚にはトイレで読みやすい漫画本などが置かれていた。

矢来の家 1階廊下

土間


左の和室横には、昔からお持ちの箪笥が置かれていた。

矢来の家 土間

ものたち


固定棚に乗せられた書籍。

矢来の家 ものたち

ものたち

 

矢来の家 ものたち

八兵衛


猫の八兵衛は私にも慣れてくれました。

矢来の家 八兵衛

固定棚


棚の使われ方の様子です。

矢来の家 固定棚

柱と貫穴

 

矢来の家 柱と貫穴

八兵衛


日当たりの良い特等席で寛ぐ八兵衛。

矢来の家 八兵衛
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